「養育費は、母親だけが受け取るもの」——そんなイメージを持っていませんか。実は、養育費は子どもが受け取る権利であり、母子家庭でも父子家庭でも、同じように大切なお金です。そして2026年4月1日、養育費と親権のルールが大きく変わりました。
この記事では、新しいルールを踏まえて、養育費の「決め方」「受け取り方」「払われないとき」「払う側の注意」までを、一本でつないで整理します。シングルマザーはもちろん、シングルファザーの方、そして養育費を払う側の方にも読める内容にしています。
まず結論|2026年4月から、こう変わりました
- 法定養育費:取り決めがなくても、離婚したときから請求できるようになった(子1人につき月2万円)
- 先取特権:公正証書などがなくても、養育費の一部(子1人につき月8万円まで)を、相手の財産から優先して差し押さえられるようになった
- 手続きの簡略化:財産の調査から差押えまで、裁判所で一連の手続きを進めやすくなった
- 親権:離婚後の親権を「共同」または「単独」から選べるようになった(虐待やDVのおそれがあれば単独親権)
- 親子交流:安全に会える仕組みや、試行的な実施のルールが整えられた
- 財産分与:請求できる期間が、2年から5年に延びた
出典は、法務省の「民法等の一部を改正する法律の概要」(令和8年1月)です。それぞれの詳しい仕組みは、2026年の法改正まとめでも解説しています。
データで見る|取り決めも、受け取りも、まだ少ない
国の調査(令和3年度 全国ひとり親世帯等調査)では、養育費の取り決め・受給の状況は次のとおりでした。
| 母子世帯 | 父子世帯 | |
|---|---|---|
| 養育費の取り決めをしている | 46.7% | 28.3% |
| 現在も養育費を受け取っている | 28.1% | 8.7% |
| 親子交流の取り決めをしている | 30.3% | 31.4% |
| 親子交流を現在も行っている | 30.2% | 48.0% |
母子世帯でも、養育費を受け取れているのは3割弱。父子世帯では1割にも届きません。「取り決めをしていない」ことが、受け取れない大きな入口になっています。今回の法改正は、まさにここを変えるためのものです。
養育費の全体の流れ|決める → 受け取る → 払われないとき
| 段階 | やること | ポイント |
|---|---|---|
| ①決める | 父母で話し合い → 公正証書や調停調書などの書面にする | 口約束だけにしない。金額・支払日・期間・支払方法を具体的に |
| ②まとまらない | 家庭裁判所に養育費請求調停・審判を申し立てる | 算定表を参考に、事情を考慮して決められる |
| ③払われない | 履行勧告/差押え(債権執行)/間接強制など | 2026年4月からは先取特権・手続きの簡略化で、動きやすくなった |
| ④それでも不安 | 民間の養育費保証サービスなど | 費用がかかるため、条件を比べてから |
払われなくなってからの具体的な手順は、督促と差し押さえの手順に、離婚前後の手続き全体は離婚の手続き完全ガイドにまとめています。
🌿 私の場合
私自身、いちばん安心できたのは、調停で取り決めた内容を書面(調停調書)に残せたことでした。専門的な話が多いので、分からないところは法テラスの弁護士の先生に相談しながら進めました。ひとりで判断しようとしないほうがいいと思います。
金額はどう決まる?|算定表の見方
養育費の金額は、家庭裁判所の調停や審判で、養育費算定表を参考に決められることが多いです。算定表は、令和元年(2019年)12月に裁判所が公表した改定版が使われていて、子どもの人数と年齢、そして父母それぞれの収入から、目安の金額を確認できます。
- 裁判所のサイトで、子どもの人数・年齢に合った表(表1〜表9)を選ぶ
- 縦軸に「支払う側(義務者)の年収」、横軸に「受け取る側(権利者)の年収」を当てはめる
- 交わった枠の金額が、月額の目安になる(給与所得者か自営業者かで年収の見方が変わる)
算定表は、あくまで「目安」です。子どもの病気や進学など、個別の事情があれば、話し合いで調整することもあります。「法定養育費の月2万円」は、あくまで取り決めができるまでの暫定的な金額で、算定表で出る金額より低くなることが多い点に注意してください。
新ルールの早見表|改正前と改正後
| 項目 | 改正前 | 2026年4月以降 |
|---|---|---|
| 取り決めがない場合 | 養育費の額の取り決めがないと、請求しにくい | 離婚時から、月2万円×子の数の法定養育費を請求できる |
| 差押え | 債務名義(公正証書・調停調書など)が必要 | 月8万円×子の数まで、債務名義がなくても差押えでき、他の債権者より優先 |
| 執行の手続き | 財産調査・差押えを段階ごとに申し立て | 一連の手続きを進めやすいワンストップ化 |
| 財産分与の請求期間 | 離婚から2年 | 離婚から5年 |
| 離婚後の親権 | 単独親権のみ | 共同親権も選べる(DV・虐待のおそれなどは単独親権) |
| 親子交流 | 明確なルールが少なかった | 試行的実施・婚姻中の別居時のルールなどを整備 |
法定養育費に頼りきりにしないことも大切です。これは「つなぎ」の仕組みで、支払う側が支払能力がないことを示した場合は、全部または一部を拒める場合があります。正式な取り決め(公正証書や調停調書)を目指すのが基本です。
シングルファザーの方へ|「受け取る側」は、母親だけではありません
前の表のとおり、父子世帯で養育費を受け取れている割合は8.7%と、とても低い状況です。「自分が働いているから」「元妻に請求しにくい」と、取り決めをしないまま過ごしている方も少なくないと思います。でも、法定養育費も先取特権も、性別に関係なく使える仕組みです。
- 子どもを主に育てている親が、もう一方の親に請求できます。父親が育てているなら、元妻に請求できます
- 取り決めがない場合も、離婚の日から法定養育費(子1人月2万円)を請求できます(2026年4月1日以降に離婚した場合)
- 公正証書や調停調書があれば、払われないときの差押えも、母子家庭と同じように進められます
- 児童扶養手当は父子家庭も対象です。金額や所得制限は児童扶養手当の記事、手当全体は父子家庭の手当一覧で確認できます
- 仕事と子育ての両立で悩んだときは、シングルファザーの仕事の記事も参考になります
養育費は「生活が苦しい人がもらうもの」ではなく、親であれば、経済力に応じて分担する責任です。収入に余裕があるかどうかで、請求をあきらめる必要はありません。
養育費を払う側の方へ|知っておきたい新ルール
この記事は、養育費を払う側(義務者)の方にも読んでもらえるよう、大切なポイントをまとめます。
- 取り決めがなくても、請求される可能性があります:2026年4月1日以降に離婚した場合、法定養育費(子1人月2万円)を請求されることがあります
- 差押えが動きやすくなっています:月8万円×子の数までは、公正証書などがなくても差押えの対象になり得ます
- 支払能力がないときは、事情を示すことが大切:失業や病気などで支払いが難しい場合、黙って止めず、早めに話し合いや調停で相談しましょう
- 事情が変わったら、減額の相談を:収入の大きな変化などがあれば、増額・減額を家庭裁判所に求める手続きがあります
- 取り決めは書面で、無理のない金額に:現実的な金額で決めておくほうが、長く続けやすくなります
払う側にとっても、子どもの成長を支える大切な責任です。トラブルになる前に、弁護士や法テラスなどの専門家に相談することをおすすめします。
親子交流と養育費|別々に考えるのが基本です
親子交流(面会交流)についても、新しいルールが整えられました。たとえば、調停や審判の前に試行的に交流を行う仕組みや、婚姻中に別居している場合の親子交流のルールなどです。
養育費と親子交流は、しばしば一緒に語られますが、別の問題です。「会えないから払わない」「払ってくれないから会わせない」と、交換条件のようにしてしまうと、こじれやすく、子どもにも負担がかかります。個別の事情は、専門家に相談しながら進めてください。親子交流の決め方は、面会交流の決め方の記事で解説しています。DVなどで会うことが危険な場合は、安全を最優先に、専門の相談窓口へ相談してください。
施行前に離婚した人は?|使える制度・使えない制度
| 制度 | 2026年4月1日より前に離婚した人 |
|---|---|
| 法定養育費 | 対象外(施行日以後の離婚が対象) |
| 通常の養育費の請求 | これまでどおり可能(調停・審判の申立て) |
| 先取特権 | 施行日以後に発生する養育費が対象(施行前の取り決めでも付与される) |
| 親権者の変更 | 家庭裁判所に申し立てて、変更を求めることができる |
「もう離婚したから、新しい制度は関係ない」と思っていた方も、先取特権など、使える部分があります。取り決めが曖昧なままなら、この機会に見直してみてください。
払われないときの備え|養育費保証という選択肢
取り決めをしても、あとから払われなくなる心配がゼロになるわけではありません。強制執行などの公的な手続きは、時間も手間もかかります。そこで、民間の「養育費保証」を選ぶ人もいます。養育費が滞ったときに、保証会社がその月の分を立て替えてくれるサービスです。
ただし、費用がかかり、対象にならないケースもあります。「必ず使うべきもの」ではなく、取り決めをしたうえでの、備えのひとつとして考えるのがおすすめです。一例として、養育費保証PLUS(株式会社Casa)の公式サイトに載っている内容をまとめます。
| 項目 | 内容(公式サイトより) |
|---|---|
| 初回の費用 | 月額養育費の1か月分(初回保証契約料) |
| 毎月の費用 | 月額養育費の3%(最低月額1,000円) |
| 保証の上限 | 最大36か月分(月5万円なら180万円) |
| 申込みに必要なもの | 公正証書・離婚協議書・調停調書・審判書などの取り決め文書 |
| 対象外 | 過去の未払い分、養育費以外(婚姻費用・財産分与・慰謝料など) |
たとえば、月5万円の養育費なら、初回は5万円、毎月は1,500円(3%)がかかる計算です。費用がかかる点や、すでに払われていない分は対象外な点は、先に知っておきたいところです。複数の自治体では、保証の利用料を補助する制度もあります(最大5万円の例が公式サイトに紹介されています)。お住まいの自治体の案内も確認してみてください。
ほかのサービスとの比べ方や、公的な手続きとの使い分けは 養育費、あきらめない?確実に受け取るための制度と手続きを徹底解説 にまとめています。サービスの内容は、公式ページで最新のものを確認してください:養育費保証PLUS(Casa)の公式ページを見る
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困ったときの相談先
- 法テラス:収入などの条件を満たせば、無料の法律相談や、弁護士費用の立替制度が使えます
- 養育費等相談支援センター:養育費の取り決めや履行確保について、専門の相談員が対応します
- 市区町村のひとり親相談窓口・母子父子自立支援員:生活全般や、制度の案内を受けられます
- 家庭裁判所:養育費請求調停・審判の申立て窓口です
お金の面での備えは、養育費保証サービスの比較も参考にしてください。
よくある質問
取り決めがなくても、いつからでも請求できますか?
法定養育費は、2026年4月1日以降に離婚した場合に、離婚の日から請求できる仕組みです。それ以前に離婚した方は、通常の養育費の請求(調停・審判)で取り決めを進めます。
法定養育費の月2万円は、必ずもらえますか?
必ずではありません。支払う側が、支払う能力がないことなどを示した場合は、全部または一部を拒める場合があります。あくまで、正式な取り決めができるまでの暫定的な金額です。
先取特権があれば、公正証書は不要ですか?
不要とは言い切れません。先取特権は「月8万円×子の数」までの部分に付く優先権で、それを超える部分や、確実に回収するためには、公正証書や調停調書などの書面があるほうが安心です。
共同親権になると、養育費はどうなりますか?
共同親権かどうかにかかわらず、養育費は別に取り決め、請求できます。親権のかたちと養育費の支払いは、別のものとして考えます。
子どもが18歳になったら終わりですか?
法定養育費は、正式な取り決めをした日、養育費の審判が確定した日、子が18歳になった日のうち、いちばん早い日までとされています。正式な取り決めでは、大学卒業までなど、期間を話し合いで決めることもできます。
相手と連絡が取れません。どうすれば?
連絡が取れなくても、家庭裁判所の調停・審判、財産調査や差押えの手続きを進められる場合があります。まずは法テラスや自治体の窓口に相談してください。
まとめ:知って、動いた人から、守られます
2026年4月から、養育費のルールは「取り決めがなくても請求できる」「差押えが動きやすい」方向へ、大きく変わりました。母子家庭でも父子家庭でも、そして払う側にとっても、取り決めを書面にして、早めに相談することが、いちばんの近道です。ひとりで抱え込まず、使える制度と窓口を頼ってください。
参考・出典
- 法務省「民法等の一部を改正する法律の概要」(令和7年12月・令和8年1月)、養育費に関する法務省令の概要
- 厚生労働省「令和3年度全国ひとり親世帯等調査」結果(令和5年1月)
- 裁判所「養育費に関する手続」「養育費・婚姻費用算定表(令和元年12月公表)」
- ※ 本記事は2026年9月時点の一般的な情報です。個別の事情によって判断が変わるため、具体的な手続きは弁護士・法テラス・家庭裁判所などの専門家にご相談ください。
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この記事を書いた人:masako
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