「生活保護を受けていても、働いていいの?」「働いたら、その分、保護費が減るだけで損では?」——子どもを育てながら生活保護を受けている(または検討している)お母さんから、よく聞かれる疑問です。結論から言うと、生活保護を受けながら働くことはできますし、法律でも「能力に応じて働くこと」が求められています。そして、働いて得た収入のすべてが保護費から引かれるわけではなく、一部は「勤労控除」として手元に残る仕組みになっています。この記事では、厚生労働省の資料と実施要領をもとに、収入認定と勤労控除のしくみを整理します。
💡 この記事の結論
- 生活保護を受けながら働くことは、できる(むしろ、能力に応じて働くことが求められる)
- 働いて得た収入は、必ず福祉事務所に申告する(隠すと、あとで返還や徴収の対象になる)
- 収入から「勤労控除」を引いた額が収入認定され、その分だけ保護費が調整される。控除された分は、手元に残る
- 児童扶養手当や年金も、収入として認定される。「働いた収入」だけではない
- 収入が最低生活費を超えると、保護は停止・廃止になる。そのとき就労自立給付金の仕組みがある
まず知りたい|保護費が決まるしくみ
生活保護では、国が定めた「最低生活費」から、世帯の収入(収入認定額)を引いた差額が、保護費として支給されます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 最低生活費 | 生活扶助・住宅扶助・教育扶助などを合計した、世帯が最低限の生活をするために必要な額(母子加算などの加算を含む) |
| 収入認定額 | 世帯の収入から、勤労控除などを引いた額 |
| 保護費(支給額) | 最低生活費 - 収入認定額(収入が最低生活費を超えると、支給はなくなる) |
🧮 しくみを見るための例(数字は仮のものです)
- 最低生活費が15万円の世帯で、パートの収入が5万円あったとする
- 勤労控除が仮に1万円だとすると、収入認定額は4万円(5万円 − 1万円)
- 保護費は、15万円 − 4万円 = 11万円
- 手元に入るのは、保護費11万円 + 収入5万円 = 16万円。働かない場合(15万円)より、1万円多くなる
- ※ 実際の最低生活費・控除額は、地域・世帯構成・収入の額で変わります。あくまで、仕組みを理解するための例です。
つまり、働いた分だけ手取りが増えるように設計されています。「働いても損をする」というのは、この控除の仕組みを知らないことから生まれる誤解のことが多いのです。
「勤労控除」とは?|手元に残るお金
勤労控除は、就労に伴う経費を補い、働く意欲を支えるために、就労収入の一部を収入認定から除く仕組みです。主な種類は次のとおりです。
| 種類 | 内容 | 金額の目安(令和7年4月基準・1級地-1の場合) |
|---|---|---|
| 基礎控除 | 就労に伴って経常的にかかる経費を補い、就労意欲を高めるため、収入の一部を手元に残す | 収入額に応じて設定。全額控除の額は15,000円(収入が一定額までは、全額が手元に残る) |
| 新規就労控除 | 新たに、継続性のある仕事に就いた人の、就労にかかる経費を補う | 12,600円 |
| 20歳未満控除 | 就労している20歳未満の人(高校生など)の自立を助けるため | 11,600円 |
- 基礎控除は、収入が増えるほど控除額も増えていく仕組み(就労収入額に比例して控除額が増加)
- 勤務先からの給与は、通勤費などを引く前の額で、控除額の区分が決まる
- 世帯で2人以上が働く場合は、収入が最も多い人に1人目の欄、ほかの人には2人目以降の欄が使われる
- ボーナスなどの臨時的な収入は、分割して認定される場合がある
※ 基礎控除の金額は、地域や、世帯の状況によって変わります。自分の場合、いくらになるのかは、ケースワーカーに、給与明細を見せて確認してみてください。
収入として扱われるもの・扱われないもの
| 収入の種類 | 扱い(目安) |
|---|---|
| パート・アルバイトの給与 | 就労収入として認定。基礎控除などを引いた額が収入認定額になる |
| 児童扶養手当 | 収入として認定。受給額を、各月に分けて認定する(実施要領) |
| 年金(遺族年金・障害年金など) | 収入として認定される |
| ボーナス・臨時収入 | 収入として申告。分割して認定される場合がある |
| 養育費・仕送りなど | まず福祉事務所に申告して、扱いを確認する |
| 高校生のアルバイト収入 | 進学の費用にあてる場合などは、収入認定から除かれる取り扱いがある。ただし、届出は必要 |
⚠️ 「少しだけだから」は、あとで困る
- 収入を申告しないまま保護費を受け取ると、あとで返還や、ペナルティつきの徴収になる場合があります
- 現金の手渡しの仕事(内職・短期バイト)も、収入に当たります
- 迷う収入は、先に相談。「これは申告が必要ですか?」と聞くだけで大丈夫です
届出や返還のルールは、生活保護法で決まっています(収入や家計に変化があれば、すみやかに届け出ることが義務とされています)。
届け出の流れ|毎月やること
- STEP1:給与明細(または、収入がわかる書類)を、毎月とっておく
- STEP2:収入申告書に、働いた収入を記入して、福祉事務所へ提出(提出の頻度や方法は、福祉事務所によって異なります)
- STEP3:収入認定額が決まり、保護費が調整される
- STEP4:仕事や収入が変わったとき(転職・勤務時間の変更・給料の変動)は、その都度すみやかに連絡
✅ 申告のときのコツ
- 給与明細は、1か月分ずつファイルに。コピーも取っておくと安心
- 勤務先からもらう書類(源泉徴収票・雇用契約書など)も、求められたときに出せるように
- わからない項目は、空欄にせず、ケースワーカーに聞く
- 「今月は少なかった」「臨時で増えた」という変化も、そのまま伝える
母子家庭の働き方|どう考える?
| 働き方 | 考え方のポイント |
|---|---|
| 短時間のパート | 子どもが小さいときの第一歩。控除があるので、働いた分は手取りに反映される |
| 勤務時間を少しずつ増やす | 収入が増えると保護費は減るが、手元に残る分は増える。無理のない範囲で |
| 正社員をめざす | 収入が最低生活費を上回れば、保護から「卒業」。資格や訓練で近づける |
| 在宅・内職 | 収入として申告が必要。必要経費の扱いは、福祉事務所に確認 |
資格やスキルで収入を上げたいときは、高等職業訓練促進給付金や、高卒認定の学び直し支援など、ひとり親向けの制度が使える場合があります。生活保護を受けながら使えるかどうかは、先に福祉事務所へ確認してください。
収入が増えたあと|「卒業」の流れ
働いて収入が増え、最低生活費を安定して上回るようになると、保護が「停止」または「廃止」になります(生活保護法第26条)。
| 停止 | 廃止 | |
|---|---|---|
| どんなとき | おおむね6か月以内に再び保護が必要になりそうなとき。または、様子を見る必要があるとき | 保護を再開する必要がないとき。または、おおむね6か月を超えて保護が不要な状態が続くとき |
🎁 就労自立給付金という仕組み
- 安定した仕事に就いて、保護が不要になった人に支給される(生活保護法第55条の4)
- 受給中の就労収入に応じて仮想の積立をして、保護廃止のときに支給
- 支給の上限額は、単身世帯10万円・多人数世帯15万円(制度創設時の公表資料)
- ※ 金額や要件は変わることがあります。最新の内容は福祉事務所で確認してください。
保護が終わった直後は、家賃や税金・保険料の負担が、一気に増えることがあります。就労自立給付金は、その最初の備えになります。保護が終わっても、再び困ったときは、あらためて申請できます。
よくある質問
パートを始めたら、すぐ保護が打ち切りになりますか?
いいえ。収入が最低生活費を下回っているあいだは、収入認定額を引いた差額が、保護費として支給されます。収入が最低生活費を安定して上回るようになったときに、停止・廃止が検討されます。収入が増えたら、まず福祉事務所に伝えてください。
働くと、児童扶養手当はどうなりますか?
児童扶養手当は、生活保護では収入として認定されます。実施要領では、受給額を各月に分けて収入認定すると定められています。生活保護を受けている間の手当の扱いは、福祉事務所で確認してください。
ボーナスが出たときは、どうしたらいいですか?
ボーナスなどの臨時的な収入も、収入として申告します。分割して認定される場合もあります。受け取る前の段階で、福祉事務所に連絡しておくと安心です。
内職や、フリマアプリの売上も、申告が必要ですか?
継続的に収入が入る内職や副業は、収入として申告が必要です。売上や、受け取ったお金の扱いは内容によって異なるため、迷ったら、先に福祉事務所に聞いてください。
高校生の子どもがアルバイトをしてもいいですか?
アルバイトをすること自体は可能ですが、収入として届け出が必要です。進学の費用にあてる場合など、収入認定から除かれる取り扱いがありますが、条件があります。始める前に、福祉事務所に相談してください。
まとめ|働くことは、「損」ではなく「手元に残る」仕組み
🌸 この記事のまとめ
- 生活保護を受けながら働くことはできる。収入は必ず申告する
- 保護費は、最低生活費 - 収入認定額。収入認定額は、収入から勤労控除を引いた額
- 基礎控除・新規就労控除・20歳未満控除など、手元に残る仕組みがある
- 児童扶養手当や年金も、収入として認定される
- 収入が最低生活費を上回ると卒業。就労自立給付金の仕組みもある
- 不安なときは、給与明細を持って、ケースワーカーに相談しましょう
※ 制度の内容・金額は、年度や地域、世帯の状況によって変わります。最新の情報は、お住まいの福祉事務所、または厚生労働省の案内で確認してください。
参考・出典
- ※ 厚生労働省「生活保護制度の概要等について」(第52回社会保障審議会生活保護基準部会 参考資料・令和7年6月24日)
- ※ 厚生労働省「生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて」(勤労控除・収入認定の取扱い、停廃止の取扱い)
- ※ e-Gov法令検索「生活保護法」(第26条・第55条の4・第60〜61条)
- ※ 2026年10月時点の公表資料にもとづきます。最新の内容は福祉事務所でご確認ください。
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この記事を書いた人:masako
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