「生活保護を受けたら、車は手放さないといけないの?」——仕事や子どもの送迎、通院に車が欠かせない母子家庭にとって、とても大きな不安です。結論から言うと、原則として車は処分が求められますが、通勤や通院などで「どうしても必要」と認められる場合には、例外的に保有できることがあります。この記事では、厚生労働省の通知にもとづいて、その条件を分かりやすく整理します。
💡 結論:「原則は処分」だが、条件を満たせば保有できる場合がある
- 生活保護では、資産は生活のために活用するのが原則。車は、原則として処分が求められる
- ただし、通勤・通院などで車がないと生活が成り立たないと認められる場合は、例外として保有が認められることがある
- 保有が認められるかは、世帯の状況・地域・車の価値・維持費の見込みを総合して、福祉事務所が判断する
- 「持っているから申請できない」と決めつけず、まず福祉事務所に相談することが大切
なぜ、車は「原則処分」なのか
生活保護は、持っている資産や能力を、まず生活のために活用したうえで、それでも足りない分を支給する制度です。車は処分すれば現金になる資産であり、維持費(税金・保険・ガソリン・車検など)もかかるため、「原則として処分して、生活費にあてる」という考え方が取られています。
一方で、車がなければ働けない、通院できないという家庭もあります。そのため、厚生労働省の通知では、「社会通念上、処分させることが適当ではないもの」として、一定の条件を満たす場合に保有を認める扱いが定められています。
通勤に使う車が認められるケース
通勤用の車については、次のいずれかに当てはまり、自動車以外で通勤する方法が全くない、または通勤がきわめて困難であり、保有が社会的に適当と認められるときに、保有が認められるとされています。
| 認められうるケース | 内容 |
|---|---|
| ① 障害のある人が通勤する場合 | 障害により、車での通勤が必要な場合 |
| ② 公共交通機関の利用が著しく困難な地域に住む場合 | 最寄りのバス・電車がほとんどない地域など |
| ③ 勤務先が、公共交通機関の利用が著しく困難な地域にある場合 | 工場・事業所が、交通の便が悪い場所にあるなど |
| ④ 深夜勤務などの仕事で通勤する場合 | 終電・始発の時間帯に合わない勤務など |
✓ ②〜④の場合に、さらに必要な「4つの条件」
- 世帯の状況から見て、車での通勤がやむを得ず、その仕事が世帯の自立に役立っていると認められる
- その地域の車の普及率を考えて、車を持たない低所得世帯との均衡を失わない
- 車の処分価値が小さく、通勤に必要な範囲の車である
- その仕事による収入が、車の維持費を大きく上回る
つまり、「高価な車」や「必要以上に大きな車」は認められにくく、通勤に必要な最小限の車であることが前提です。また、仕事で得る収入が維持費を大きく上回ることも条件になるため、維持費を含めた収支のイメージを持っておくことが大切です。
通院などに使う車が認められるケース
通院・通所・通学のための車についても、次の2つのケースで、すべての要件を満たす場合に保有が認められるとされています。
| ケース | 主な要件(概要) |
|---|---|
| 障害のある人(児)が、通院・通所・通学のために車が必要 | 定期的に車が利用される/公共交通機関の利用が困難で、送迎サービスなども活用できない/車の処分価値が小さく、必要最小限(排気量はおおむね2,000cc以下)/維持費が他からの援助などで確実にまかなえる/本人または家族が運転する |
| 公共交通機関の利用が著しく困難な地域に住む人が、通院などのために車が必要 | 定期的な利用が明らか/送迎サービスなどの活用が困難で、タクシーより車の方が地域の実態に照らして妥当/車の処分価値が小さく、必要最小限(おおむね2,000cc以下)/維持費が他からの援助などで確実にまかなえる/本人または家族が運転する |
「失業中・休職中」でも、すぐに処分とは限らない
通勤用の車は、本来「現に働いている人」が対象です。しかし、申請のときに失業や病気で一時的に仕事を休んでいても、仕事に復帰する見込みがある場合には、特別な取り扱いがあります。
⚠️ 就労再開が見込まれるときの扱い(概要)
- おおむね6か月以内に就労して保護から抜けることが確実に見込まれ、車の処分価値が小さい場合は、処分の指導をしないことがある
- 6か月を過ぎても保護から抜けていない場合でも、就労の妨げがなく、自立に向けた活動を具体的に行っていると判断されれば、開始から概ね1年の範囲内で、処分指導を行わないことがある
- ただし、これは処分の指導が保留されているだけで、求職活動中に車を使ってよいという意味ではない。公共交通機関の利用が著しく困難な地域では、求職活動に必要な場合に限って使用が認められることがある
- 維持費をまかなえない場合は、この取り扱いの対象外になる
働く人の「車の費用」はどう扱われる?
通勤用の車の保有が認められた場合、通勤のための燃料費・修理費・車検費用・自賠責保険料・任意保険料・自動車税(軽自動車税)・免許の更新費用などは、「必要最小限の額」を必要経費として、働いた収入から差し引いてよいとされています(任意保険は対人・対物賠償に係るものなど、範囲が限られます)。
これは、「働くために必要な費用」が、保護費の計算に反映される仕組みです。実際にどの範囲が認められるかは、福祉事務所の判断になるため、車を使って働いている場合は、領収書や維持費の内訳を整理して相談しましょう。
車が認められない場合の、代わりの移動手段
| 移動手段 | ポイント |
|---|---|
| 自転車・電動アシスト自転車 | 近距離の通勤・送迎には現実的。購入費・バッテリー交換など維持費も少なめ |
| 公共交通機関(定期券) | 通勤費は、収入の算定で必要経費として扱われる場合がある(福祉事務所で確認) |
| 地域の送迎サービス・福祉有償運送など | 通院の送迎は、自治体の制度や病院の送迎が使える場合がある |
| タクシー・カーシェアを必要なときだけ | 維持費の固定費がかからず、必要な日だけの利用に向く |
送迎が必要な子育て世帯の工夫は 習い事の送迎問題|ひとり親が無理なく乗り切る方法、通勤定期の割引は ひとり親の通学定期・通勤定期の割引制度 もあわせて確認してみてください。
車の維持費は、いくらかかる?|持つ前に確認したい
車を保有できる条件では、維持費をまかなえる見通しがあるかが重要になります。普通車と軽自動車の税金の違いを含め、維持費の全体像は シングルマザーの車の維持費 でまとめています。生活保護の相談の前に、毎月・毎年にかかる金額を整理しておくと、福祉事務所に状況を伝えやすくなります。
相談するときの準備
✓ 福祉事務所で聞かれやすいこと
- 車の状況:車種・年式・排気量・所有者・ローンの有無
- 車を使う目的:通勤・通院・送迎など、いつ・どこへ・どのくらい使うか
- 他の移動手段:最寄りのバス停や駅までの距離、運行本数
- 維持費:税金・保険料・車検・ガソリン代・駐車場代の目安
- 収入の見込み:仕事の内容、勤務時間帯、給与の見込み
よくある質問
母子家庭で、子どもの送迎のためだけに車を持つことはできますか?
通知で示されている保有の例外は、「通勤」と「通院・通所・通学」です。子どもの送迎のみを理由とした保有は、通知に示された例外には含まれていません。ただし、子どもの状況(障害の有無など)や地域の事情で判断が変わるため、福祉事務所に具体的な事情を伝えて相談してください。
車を処分したら、あとで困りませんか?
処分によって収入が得られたり、維持費がなくなったりするメリットがある一方、仕事や通院に支障が出るかを事前に考える必要があります。処分する前に、福祉事務所で「保有が認められる可能性」を確認しておくと、取り返しがつかない判断を避けられます。
家族の名義の車を使うのは、問題ありませんか?
名義や使用の状況によって、扱いが変わることがあります。自己判断せず、車の所有者・使用目的・維持費の負担を福祉事務所に正確に伝えて、相談しましょう。事実と異なる申告は、あとで問題になることがあります。
買い替えはできますか?
保有が認められている車でも、買い替えには条件があります。通知では、保有の事情が変わらず、新しい車も必要な範囲で処分価値が小さいこと、更新にかかる費用が他からの援助などで確実にまかなえることなどが、要件として示されています。買い替えの前に、必ず福祉事務所へ相談してください。
まとめ|「持てるか」は、条件と事情で決まる
✓ この記事のポイント
- 生活保護では、車は原則として処分が求められる
- ただし通勤・通院など「どうしても必要」な場合は、条件を満たせば保有できることがある
- 通勤用は4つの条件(やむを得ない通勤・普及率・処分価値が小さい・収入が維持費を大きく上回る)
- 通院用は維持費がまかなえる見通しと、排気量がおおむね2,000cc以下などが要件
- 迷ったら、処分する前に、福祉事務所に相談する
※ 取り扱いは、国の通知にもとづいて、福祉事務所ごとに個別に判断されます。通知の内容が変わることもあるため、最新の情報は福祉事務所または厚生労働省の案内で確認してください。
参考・出典
- ※ 厚生労働省「生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて(課長通知)」第3の問9・問9の2・問12・第8の問2(2024年4月1日施行の生活保護実施要領等 掲載)
- ※ 2026年10月時点の公表資料にもとづきます。最新の内容は福祉事務所でご確認ください。
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この記事を書いた人:masako
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