「子どもが入院することになりました。付き添いをお願いします」——病院からそう言われたとき、ひとり親は、頭の中がいっぱいになります。仕事は休めるのか。下の子は誰が見るのか。付き添い中のお金は、どれくらいかかるのか。相談できる相手が近くにいないと、ぜんぶ一人で考えることになります。
この記事では、厚生労働省の通知と、こども家庭庁の調査(令和5年度)をもとに、子どもの入院の付き添いについて、「ルール」「病院の実際」「かかるお金」「仕事・預け先の備え」を、順番に整理します。入院が決まってからでも、決まる前でも、読みながら準備ができるようにまとめました。
💡 この記事の結論
- 厚生労働省の通知では、小児患者への家族の付き添いは「医師の許可を得て付き添うことは差し支えない」という書き方。家族に付き添いを義務づける内容ではありません
- こども家庭庁の調査では、回答した小児の病院の43.6%が「病状などを考えて、基本的に付き添いをお願いしている」。6割以上の病院が、75%以上のケースで家族が付き添うと答えています
- 付き添い中の寝具は、8割以上の病院が貸与。有料の場合は200円〜1,000円未満が多い。食事は、コンビニを使う家族が80.9%で、病院が食事を出すのは29.0%
- 仕事は、子の看護等休暇(令和7年4月から対象が広がった)や、有給休暇を組み合わせて備える
- 入院が決まったら、病院に「付き添いの条件」を聞く。聞くことは、この記事の10項目のチェックリストを使えば、抜けにくくなります
義務ではありません
付き添いをお願い
有給の組み合わせ
付き添いのルール|厚生労働省の通知では、どうなっている?
まず、「付き添いは、そもそもどういう扱いなのか」を確認しておきます。保険診療のルールを定めた、厚生労働省の通知(令和4年3月4日付け 保医発0304第2号)には、次のような内容があります。
| ポイント | 通知の内容(要約) |
|---|---|
| 看護の担い手 | 病院での看護は、その病院の看護職員だけで行うのが原則 |
| 患者の負担による付き添い | 患者が費用を負担して、付添人(付添看護)を頼むことは行ってはならない |
| 家族が付き添える場合 | 患者の病状により、または治療に対する理解が難しい小児患者などの場合は、医師の許可を得て、家族など「患者の負担によらない者」が付き添うことは差し支えない |
| 注意点 | 家族の付き添いが、病院の看護職員による看護の代わり・補いになってはならない |
つまり、小さな子どもの場合、「医師の許可を得て、家族が付き添ってもよい」という位置づけです。そして、病院の看護は、本来は病院の看護職員が行うもの。家族が付き添っていることが、看護の代わりになってはいけないとも書かれています。
もう一つ大切なのが、令和4年11月9日の厚生労働省 保険局医療課の事務連絡です。家族の付き添いの実態調査で、「付き添う前に、もっと説明してほしい」という声があったことを受けて、病院に対し、付き添う理由や範囲を、医師などが家族に十分に説明すること、病室の設備など付き添いに必要な情報を、丁寧に伝えることを求めています。
付き添いを頼まれたとき、「なぜ必要なのか」「どこまでするのか」を聞くのは、わがままではなく、正当なことです。聞いてよい、と覚えておいてください。
実際の病院は、どうしている?|こども家庭庁の調査
では、現場の病院は、付き添いをどう扱っているのでしょうか。こども家庭庁が実施した、令和5年度「入院中のこどもへの家族等の付添いに関する病院実態調査」(調査の実施は野村総合研究所)が、その実態を示しています。全国の小児中核病院・小児地域医療センター・小児地域支援病院751か所に調査票を送り、349か所が回答しました(調査期間は令和5年12月〜令和6年1月)。
入院が決まったとき、病院の方針は?
| 病院の方針(宿泊を伴う付き添い) | 割合 |
|---|---|
| こどもの病状等を考えた上で、基本的に付き添いをお願いしている | 43.6% |
| 付き添いの希望があれば、原則すべての小児に許可している | 29.8% |
| 希望があった場合、特定の条件の小児については許可している | 20.3% |
| 基本的に付き添いは許可していない | 6.3% |
いちばん多いのは、「基本的に付き添いをお願いしている」の43.6%でした。また、実際に家族が付き添う比率については、6割以上の病院が「75%以上のケースで、家族が付き添う」と答えています。「子どもが入院したら、親が付き添うことになる」場面が多いのが、今の現実だといえます。
ただし、この調査は、小児医療の中核を担う大きな病院が対象です。お住まいの地域の病院や、入院する病棟によって、ルールは違います。「うちの病院は、どうなのか」は、入院が決まった時点で、必ず確認しましょう。
付き添い中の「寝る・食べる」環境と、費用の目安
付き添いで気になるのが、「どこで寝るのか」「食事は、どうするのか」です。同じ調査の結果から、病院側が整えている環境を見てみましょう。
| 項目 | 調査の結果 |
|---|---|
| 寝具の貸与 | 8割以上の病院が行っている。簡易ベッドの貸与が多い |
| 寝具の料金 | 有料の場合は、200円から1,000円未満の病院が多い。貸与276件のうち、無料のところも50件程度 |
| 寝具の貸与がない病院 | 貸与なしは48件(14.8%)。その家族の就寝場所は、子どもと同じベッドで寝るケースが74.5% |
| 付き添う家族の食事 | コンビニ80.9%、レストラン・食堂44.8%、病院の給食(病院食)29.0%の順(複数回答) |
| 家族向けの食事提供 | 提供している病院の9割は、昼食を提供 |
| 相談できる環境 | 約8割の病院が、医療ソーシャルワーカー(MSW)や看護師などに相談できる場を設けている |
| プライバシーの工夫 | 多床室(大部屋)では、カーテンやパーテーションを設置している病院が9割以上 |
ここから見えてくるのは、「寝具は借りられることが多いが、食事は自分で用意する家族が多い」ということです。付き添う親の食事代は、基本的に自己負担だと考えて、準備しておくのが安心です。
また、この調査の背景には、NPO法人キープ・ママ・スマイリングの調査(令和4年11月〜12月)で、「付き添いの説明が十分でない」「希望した付き添い者に、十分な休息・食事が確保されていない」といった課題が示されたことがあります。つらさを感じるのは、あなただけではありません。「休めない」「食べられない」と感じたら、がまんせずに、看護師やMSWに相談してください。
付き添いでかかるお金|3つに分けて考える
子どもの入院でかかるお金は、「子ども本人の入院費」「付き添う親の出費」「仕事を休むことによる収入の減少」の3つに分けると、見通しが立ちやすくなります。
| お金の種類 | 内容 | 備え・確認先 |
|---|---|---|
| ① 子どもの入院費 | 診察・治療費、入院中の食事代(標準負担額)など | 子ども医療費助成、ひとり親家庭の医療費助成の対象か、自治体で確認 |
| ② 付き添う親の出費 | 寝具の貸与料、親の食事代、交通費、洗濯・日用品など | 病院に寝具の料金と、食事の取り方を確認する |
| ③ 収入の減少 | 付き添いで仕事を休んだ分の給料 | 子の看護等休暇、有給休暇、会社の制度を確認 |
① 子どもの入院費|医療費助成で、自己負担はどうなる?
子どもの医療費は、自治体の子ども医療費助成や、ひとり親家庭の医療費助成で、自己負担が軽くなる地域が多くあります。ただし、助成の内容は自治体で違います。特に、入院中の食事代(標準負担額)が助成の対象になるかは、自治体によって異なります。入院が決まったら、医療証が使えるか、食事代はどうなるかを、役所か病院の窓口で確認しておきましょう。
制度の詳しい内容は、子ども医療費助成の記事、ひとり親家庭の医療費助成の記事、自治体による違いの記事にまとめています。
入院中の食事代(食事療養の標準負担額)は、一般の方で1食550円(令和8年6月〜、協会けんぽの案内による)で、区分によって減額があります。保険が使える医療費は、年齢や所得に応じた自己負担になりますが、食事代は医療費助成とは別に考えると整理しやすくなります。
② 付き添う親の出費|仮の金額で、見積もってみる
付き添う親の食事は、コンビニなどを利用する家族が多いことが、先ほどの調査で分かっています。たとえば、(仮の金額)親の食事が1食600円、1日3食、7日間の入院なら、600円×3食×7日=12,600円です。これに、寝具の貸与料や交通費が加わります。
📝 付き添いの出費メモ(入院前に、書き出してみる)
- 寝具の貸与:有料か無料か。料金は、1日いくらか、まとめていくらか
- 親の食事:病院で用意されるか。売店・コンビニ・食堂の場所と営業時間
- 交通費・駐車場代:通う場合、1日あたりいくらか
- 日用品・洗濯:コインランドリーや、洗濯できる設備はあるか
- 合計の目安:入院の見込み日数をかけて、金額を出しておく
金額を出しておくと、「いくら用意すればいいか」が分かって、不安が小さくなります。病院によって条件が違うので、数字は必ず病院に確認してください。
仕事|付き添いで休むときの備え
ひとり親にとって、いちばん大きな心配は「仕事を休めるか」でしょう。使える制度を、整理します。
子の看護等休暇(令和7年4月から、対象が広がりました)
子の看護等休暇は、育児・介護休業法で定められた休暇です。令和7年4月の改正で、対象が広がりました。厚生労働省の解説では、次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象の子 | 小学校3年生修了までの子を養育する労働者 |
| 日数 | 子が1人なら年5日、2人以上なら年10日 |
| 休める理由 | 子の病気・けがの看護、予防接種・健康診断、感染症に伴う学級閉鎖等、入園(入学)式・卒園式など |
| 勤続期間 | 勤続6か月未満の人を、労使協定で対象外にできる仕組みは廃止された |
| お給料 | 休暇中の賃金を有給にするか無給にするかは、会社の規則による |
入院に付き添うために休む場合も、子の「病気・けが」の看護にあたると考えられます。取り扱いは、会社に確認してください。ただ、入院が長引くと、5日(または10日)では足りません。年次有給休暇や、会社の特別休暇・時短勤務などと、組み合わせて考えましょう。制度の詳細は、会社の就業規則で確認してください。
会社への伝え方|入院が決まったら、すぐ連絡
- 入院が決まったら、その日のうちに、上司や人事に第一報を入れる
- 入院の見込み期間を、病院に聞いて伝える(変わる可能性があることも添える)
- 使える休暇(子の看護等休暇・有給休暇など)を、会社に確認する
- 在宅勤務や時短ができるか、相談してみる
- 書類(診断書など)が必要かを、先に聞いておく
休む日数が長くなって、収入が一時的に落ち込み、生活費が足りなくなりそうなときは、公的な貸付の相談先もあります。母子家庭が今すぐお金を借りる|公的貸付と相談窓口で、まとめています。
きょうだい・預け先|付き添い中、下の子はどうする?
付き添いで、いちばん難しいのが、上の子の入院中に、下の子を誰が見るかです。ひとり親の場合、頼れる人がいないと、病院に泊まり込むことも難しくなります。
- 親族・知人:まず、頼める人がいないかを考える。入院前に、頼む日数と時間を、具体的に伝えておく
- 自治体の支援:一時的に子どもを預かる、家事を手伝う人を派遣するなどの支援が、ひとり親家庭向けにある自治体もある
- 病児保育・ファミリー・サポート:下の子が元気な場合の預け先として使えることがある
預け先の支援については、ひとり親が入院したら|子どもの預け先とお金の不安で、詳しくまとめています。また、病児保育とファミサポの使い方も、あわせて参考にしてください。
なお、病院には面会のルールがあります。調査では、面会できる人の範囲に規定を設けている病院が約8割ありました。下の子を連れて行ってよいかは、事前に病院に確認しておくと、当日あわてません。
入院が決まったら|病院に聞く10のこと
付き添いの条件は、病院によって違います。入院が決まったら、次の10項目を、看護師や担当の窓口に聞いておきましょう。メモして持っていくと、聞き忘れを防げます。
- 付き添いは必要か。必要なら、いつまで・1日のうち何時間か
- 付き添える人は、誰までか(親・祖父母・きょうだいなど)。交代はできるか
- 寝具の貸与はあるか。料金はいくらか
- 家族の食事は出るか。出ない場合、売店・コンビニ・食堂はどこにあるか
- 洗濯やシャワーが使えるか。付き添い者用の設備はあるか
- 付き添い中に、家族がしてほしいケアは何か。分からないことは、どう聞けばいいか
- 外出や、短時間の休憩はできるか。その間、誰が見てくれるか
- 面会のルール(時間・人数・年齢の条件)は、どうなっているか
- 相談できる窓口(MSW・看護師長など)は、どこか
- 入院費の見込みと、医療費助成・限度額の手続きは、何が必要か
付き添えないとき・つらいときは?
仕事や、下の子の世話があって、「毎日は付き添えない」「夜は、付き添えない」という家庭も、少なくありません。そんなときは、一人で抱え込まず、早めに病院に伝えてください。
- 付き添いが難しい理由(仕事・きょうだいの世話・自分の体調など)を、はっきり伝える
- 「どこまでなら、できるか」を一緒に考えてもらう(面会だけ、日中だけ、など)
- 医療ソーシャルワーカー(MSW)に、仕事・お金・預け先の相談をする
- 調査では、基本的に付き添いを許可していない病院も6.3%あった。付き添いなしで看護する体制の病院もある
厚生労働省の通知にも、病院の看護は、病院の看護職員が行うのが原則と書かれています。付き添いが難しい事情を、遠慮なく伝えてよいのです。無理を重ねて、親が体調を崩してしまうと、子どもにとっても、よい状況にはなりません。
よくある質問
付き添いは、断ることができますか?
厚生労働省の通知では、家族の付き添いは「医師の許可を得て付き添うことは差し支えない」という扱いで、家族に義務づける書き方ではありません。ただ、現実には、病状や子どもの年齢によって、病院が付き添いをお願いすることが多いのも事実です。難しい事情がある場合は、仕事・きょうだいの世話・自分の体調などを具体的に伝え、できる範囲を病院と相談してください。MSWが相談に乗ってくれることもあります。
付き添いにかかる費用は、いくらくらいですか?
病院によって違います。こども家庭庁の調査では、寝具を貸す病院は8割以上で、有料の場合は200円から1,000円未満が多いという結果でした。食事は、コンビニを使う家族が80.9%でした。親の食事代が、いちばん大きな出費になりやすいので、入院の見込み日数をかけて、あらかじめ見積もっておくと安心です。
付き添うために仕事を休むと、給料はどうなりますか?
子の看護等休暇などで休んだ場合、その間の賃金を有給にするかどうかは、会社の規則によります。無給のことも多いので、年次有給休暇との組み合わせや、収入が減ったときの公的貸付も含めて、早めに計画しておきましょう。
下の子を預けられる人がいません。どうすればいいですか?
自治体には、ひとり親家庭を対象に、一時的に子どもを預かったり、家事や子育てを手伝う人を派遣したりする支援を用意しているところがあります。病院のMSWや、お住まいの役所のひとり親支援の窓口に、入院の予定を伝えて相談してください。病児保育やファミリー・サポートが使える場合もあります。
医療費助成は、入院でも使えますか?
多くの自治体で、子ども医療費助成やひとり親家庭の医療費助成は、入院にも使えます。ただし、入院中の食事代が助成の対象になるかなど、内容は自治体によって違います。入院が決まったら、医療証を病院に提示できるか、役所か病院の窓口で確認しておきましょう。
まとめ|「聞く・伝える・頼る」が、いちばんの備え
✅ この記事のまとめ
- 付き添いは、医師の許可を得て家族が付き添うという位置づけ。義務ではないが、現実には付き添いをお願いされる病院が多い
- 入院が決まったら、病院に10項目(付き添いの条件・寝具・食事・相談窓口など)を聞く
- お金は、子どもの入院費・親の出費・収入の減少の3つに分けて、見積もる
- 仕事は、子の看護等休暇+有給休暇を組み合わせて備え、早めに会社へ連絡する
- つらいときは、MSWや看護師に伝えて、頼る。一人で抱え込まない
子どもが入院したとき、いちばん心細いのは、頼れる人が近くにいないひとり親です。でも、聞いてよいこと、頼ってよい窓口は、思っているより、たくさんあります。この記事が、入院という「もしも」のときに、あなたの心の支えになれば幸いです。
※ 制度や金額は、変わることがあります。最新の情報は、病院の窓口・加入している健康保険・お住まいの自治体・勤務先でご確認ください。
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この記事を書いた人:masako
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